1.偏食とは?好き嫌いなど広く含む
偏食とは一般的に食べ物の好き嫌いのひどいもの。
- お菓子を食べ過ぎる
- 野菜を食べない
- 肉ばっかり食べる
- ジュースしか飲まない
- 特定の野菜だけ食べない
- 特定の食べ物でお腹一杯
食べ物の好き嫌いは誰にでもあり、偏食とみなすかは個人の感覚によります。
まあ定義をきっちりしても意味ないので、だいたい全て含めて話をしていきますね。
2.子どもの偏食の原因は?幼児~学童期
子どもの偏食の原因ごとの対応をお話していくので、まず原因を挙げてみます。
・子どもの味覚によるもの
・口内感覚や嗅覚の過敏さ
・先入観によるもの
・学習の結果
・生活のリズムの乱れ
・食べるものが選べ過ぎる
・発達障害だと強化される傾向
2-1.子どもの味覚は大人と違う〜偏食原因のひとつ
怪しい食べ物は、とりあえず「べー」と出すのは毒から体を守る本能。
本能的に「怪しい」と脳に認識されるのは腐った食べ物が発する酸味や苦味、ピーマン嫌いもここから来てます。
また子どもは活動に直結するブドウ糖に敏感に反応するため、大人よりも甘さを感じる機能が高い。
子どもでは、他の味に比べて「甘味」への嗜好 度が最も高く、逆に「苦味」への嗜好度は最も低いことが把握された
世代間による味覚研究
子どもと大人では味覚が違います。
子どもの頃食べられなかったものが大人になったら美味しいというのは、脳の構造が作り替えられたからという説もあります。
余談ですが私の娘が1歳くらいに覚えた言葉で「酸っぱい」があります。
不味いものは
と一括して表現していました。
2-2.口内感覚や嗅覚による偏食原因
私ごとですが、グニャクニャしたものは好きじゃなく、トンカツの端っこの脂身など嫌いなものの代表格。
トンカツの脂身だけ出すお店が人気とテレビでやってたけど、私からしたら到底理解できない感覚です。
口の中の感覚は人それぞれで、ネバネバしたものやパリパリしたもの、モソモソしたものなど、その食材を嫌う大きな要因です。
また小さい子は固いのは食べにくく、大豆をいくら柔らかく煮ても細かい皮が口に残ったらべーしたり、海苔は口に張り付いて嫌とか。
臭いも本能に直結するので、嗜好に関係します。
2-3.先入観による偏食
子どもは好奇心が強いけど、食べて体の中にいれるとなると、動物としての警戒心が働く。
臭いを嗅いでみたり、ちょっとだけ舐めてみる、いい匂いがすれば警戒心が和らぐ、食べれば美味しいのに一口目に苦労しますね。
公益社団法人 日本心理学会/食べ物を嫌いになる理由/乾 賢/「イヤとキライ」の心理学を参考
2-4.食べることについての学習の結果
✔これを食べたらおいしかった
✔これを食べたら辛くて嫌だった
✔これを残したら怒られて嫌だった
✔いつも食べてるからこれしか食べない
最初の一口でいやな経験をすると引きずってしまうので、侮れない偏食原因です。
2-5.生活のリズムの乱れ~侮れない原因
生活リズムが乱れてや間食が多いなど、食事の時間にお腹が空いていない状態も偏食原因。
お腹がすいていないとき、好きなものをちょっとつまんでお仕舞いになります。
2-6.食べるものが多すぎる
はだしのゲンや、蛍の墓など戦争直後を描いた作品は多くありますが、食べるものを選べるような状態じゃないこと。
偏食なんて言ってられない、今は食べるものが潤沢すぎます。
日本では食べきれないほどの料理を出して残させるといった文化じゃないので、残すと偏食っぽく見えます。
コミック版はだしのゲン(全10巻セット) 汐文社 1993年04月 売り上げランキング :
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2-7.発達障害による強化
発達障害の子どもは感覚の過敏さが特徴の1つ、自閉の子でよく見られる「こだわり」は、その行動の感覚が心地よいからそれをしてしまうわけです。
逆に苦手な感覚、大きな音が苦手などと同じような味覚についての感覚過敏が偏食の原因になります。
髙橋(東京学芸大学)さんは、発達障害の当事者137人に、偏食について聞き取り調査を行いました。
すると、その背景には、発達障害のある人に特有の「感覚過敏」などの感じ方があるとわかりました。
例えば、赤くて丸い、おいしそうに見える、この「イチゴ」。(画像略)
発達障害のある人の中には、「気持ち悪さ」や「怖さ」を感じる人が多くいました。イチゴの表面にあるいくつものツブツブが、目に飛び込んで来るというのです。
一方でこのコロッケ(画像略)サクサクした食感の衣ですが、発達障害の人の中には、口の中を針で刺されているように感じられ、「痛くて食べられない」と訴える人が少なくありませんでした。
ハートネット福祉総合情報サイト
規則正しく並んでいる穴ぼこが苦手です。
👆見た目の感覚も影響します。
自閉症の僕が跳びはねる理由(1) | ||||
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3.偏食を直す必要性とは?
偏食を直したい理由
我が子の偏食を直したい理由も、対応する前に考える必要があります。
マナー的な理由
ニンジンだけきれいに避けて食べていたら、一般的にはマナーが悪いですね。
栄養的な心配
肉を食べないと大きくなれないとか、野菜を食べないとよくないとか、栄養の心配をするのはもっともな理由です。
価値観的なところ
いろんなものを食べられたら人生が豊かになる、残すのはダメなど。
偏食はある程度治す必要あり
偏食は子どもの好みの問題だから放っておけばよいという考え方もあらけど、後々別の問題が出てきます。
①将来の生活習慣病の要素となる
②必要な栄養が不足し、成長に偏り
③摂食障害になりやすくなる
④わがままを助長する
⑤意欲的な活動を阻害する
⑥心の発達にも偏りが出てくる
①〜③は食べることに直結する不具合で、たまに見かける不自然に肥満な子がその結果。
何かの病気かもしれませんが。。
傾向として、子どもの糖尿病や高血圧が増えてるそうですよ
生徒に比べ、「立ちくらみ」「風邪ひき」「肩こりや目の疲れ」が「よくある」と答えた割合が多いという結果になりました。
たとえば「風邪ひき」については、嫌いな食品数が0個だと答えた生徒は「よくある」が5.4%でしたが、嫌いな食品数が4個以上の生徒は20.9%でした。
子どもまなびラボ
👆️2002年~2003年に兵庫県の公立中学校6校、中学3年生1100人のアンケート調査
④〜⑥は心理的な影響。
子どもに必要なことを教えない場合、本能のみで生きることになります
✔食欲があり楽しく食べる子は好奇心旺盛で自発的
✔食べることが嫌な子は意欲や好奇心が少ない
👆という研究結果もあります
幼児の食行動に関する研究~子どもの視点から見た食事場面の意味~
4.学童までの子どもの偏食の直し方・対応
2章で紹介した偏食の原因に対応する、具体策をお話していきます。
- 調理の工夫、見た目
- お腹が空いているときに出す
- 食べるものの限定
- 褒め方や声のかけ方
- 触覚遊びで感覚過敏への対処
- 発達別に食育
- 回りの雰囲気
- 食べ方の指導
4-1.偏食対応の王道〜調理方法や見た目の工夫
偏食への対応の一番オーソドックスなやつ。
ピーマン嫌いな子に、ピーマンをミキサーにかけてケーキに混ぜてピーマンケーキにして、「えー、ピーマンっておいしいんだ!」
👆私が小学生だった30年以上前からやってます。偏食対応になってるか微妙だけど、栄養的な心配は減ります。
食べたことのない物への警戒心は、調理の見た目である程度緩和できます。
小さいうちならケチャップでアンパンマンの顔を書いたり、海苔を小さくちぎって目や口をつけてみたり。
また口内感覚についても、
- 幼児が食べやすい柔らかさにする
- 小さくちぎって食べやすくしてみる
- 魚の骨は取ってあげる
こんなひと手間で好転します。
味覚については言うまでもなく。
手間をかけると書きましたが、親の考え方や行動が子どもの食へ影響しますので、頑張りましょう。
離乳食に関する項目では、「口の動きに合わせて、硬さや形状を変えた」について、子どもが3、4歳の場合、「はい」と答えた親の子どもが偏食である割合は50.3%、「いいえ」の場合は61.5%。同様に5、6歳の場合、「はい」だと42.6%、「いいえ」だと51.1%。
さらに「薄味に心がけた」「食品の種類を増やすことに心がけた」の項目でも、「はい」と答えた親の子どものほうが、偏食である割合が低い結果となりました。
幼児の偏食と生活環境との関連
子どもによって苦手な感覚は違うので、細かくリサーチし、歯触りや舌触りを違うものにするのも有効です。
4-2.お腹が空かせる偏食対応
生活リズムの乱れや間食が原因なら、間食を出さないか量を制限するのが唯一で最大の対策になります。
ご飯前なのに泣くからおやつ👈泣けば許されるなどの行動も学習し、良い面が無い。
子どもへの教育は甘えと厳しさのバランスで成りたっているので、程度を超えたわがままは許さない姿勢も必要です。
または活動量を増やしてお腹がすいたタイミングでご飯にするというのも有効です。
意図をもって接するという意味で参考になる記事はこちら。計画的無視の記事
4-3.褒め方や声かけで「叱るはNG」
〜偏食に限らず全般の話
子どもの偏食を見ていると、自分の価値観や気分次第ではイライラ。
👆ムカついて当然です。
ここで、「子どもは子ども、自分は自分、子どもといえども自分とは違う人間だから、そもそも思い通りにはいかない」
この概念が重要です。
自分の感情コントロールは上の記事に任せ、偏食対応での子どもへの声かけの原則は
- 褒めるはOK
- 度を越した意味不明な叱るはNG
これにも程度があって、度を越した意味不明な叱り方はNG。
例えば「こぼすから立ち歩かない」は意味がわかるので怒鳴らないなどやり方次第ではOK。
しかし偏食・好き嫌いを何とかしようとしている時には叱るのはNG。
偏食については叱るはNGというのは、嫌なものを食べないといけない、叱られて嫌だというマイナスの思いだけがダブルで蓄積されていくためです。
偏食についてだけでなく、イヤなことを怒られながらやること全般に言えます。
また偏食で料理を残すのは「いけないこと」?👈大人の価値観によるもの。
我慢してでも食感がグニャクニャしていて嫌なもの、苦くてたまらないのを食べる、食べないと叱られるから、というのはどうでしょうか。
「叱られて学ぶ」に関して、得られるものより失うものが多いと思います。
ちなみに、何でもないことですぐ叱られる子どもは反射的に嘘をつくようになります。
叱るのはNGの話はこれでおしまい。
褒め方としては偏食に限らないけど、
- 大袈裟に褒める
- 細かく褒める
細かく褒めるとは、年齢にもよりますが「行動のその瞬間にほめる」ことの繰り返しです。
偏食は固定化していたら一気にはどうにもならない、時間のかかることです。
そのため日常の積み重ねが大切で、偏食だけではない日頃の接し方の問題と直結してきます。
4-4.偏食対応~先入観の払拭法
「得たいの知れないものを拒否する」「これは不味いもの」と先入観が働いているパターン。
見た目や褒め方で対応するのも手だけど、どうしてもダメなら戦略を使います。(小さい子限定)
好きなものを「あーん」とスプーンで持っていって、直前で入れ替えて口へ・・
好物が入ってくるのを期待していたとは違うのではじめはべーしますが、「あれ、美味しいぞ」と声かけや演技を駆使して2口目にチャレンジ。
機嫌を見てタイミングを図りましょう。
美味しければ騙してでも口に入れたら、それ以降は大丈夫になることも多いです。
味が元々苦手なもの、例えばピーマンの苦味が苦手なのに、騙して口にいれてもだめですよ(^^)
調理を工夫して甘くしたピーマンを、「あ、ピーマンだ、きっと苦いから嫌だな」となっている時には有効。
4-5.毎回出して慣れを狙う
毎回出すのも有効です。
たまに出てくるのを、たまに食べさせようとするから拒否されます。
人の学習の要素は、
- 強さ
- 頻度
毎回ニンジンが出てきていて、毎日手を変え品を変え勧められていたら、たまに口に入れるかもしれません。
見た目でも慣れてくるでしょう。
4-6.超実践例~障害児施設の偏食対応から
私は障害児(主に小学生)の放課後支援の施設で、10年以上ボランティアをしており、放課後から遊びに出て、職員やボランティアが夕食を作って食べるという取り組みが日常的。
そこでの追加取り組みは"生野菜を少しでもいいから食べる"ような働きかけ。
ここまで話してきたように、障害児のなかには偏食の子どもはとても多く、生野菜はその代表格です。
ですがそのルールのもと取り組んでいくと、一年後には生野菜をバリバリ食べます。
ダウンちゃんや自閉、レア障害の子30人くらいの登録者全員が。
行われていた取り組みとテクニックをここで紹介します。
ーーー
✔夕食を用意したら、全部配膳せずにご飯とか、好きそうなおかずを少しだけ残しておきます。
✔夕食は一人一皿出し、全て一人分が決まっています。
✔その子の食べきれる量より少な目に盛るので、だいたいの子が「おかわりをしたい」と申し出ます。
好きなものをおかわりしたい時がチャンス
おかわりができることを保障して(別のお皿にとっておいてあるのを見せる)、生野菜を残していたら
そこは時間をかけ、譲歩して量を減らしてあげたりはしますが、ゼロにはしません。
そして丸のみはダメで、必ずモグモグ・カミカミとさせます。
おえっと吐き出しそうにしますが、出してしまったら再チャレンジ、モグモグしてごっくんできたら褒めちぎります。
そして晴れておかわり。
だんだんと量を増やしていけば完了します。
ーーー
この施設は週1〜多くて週2で来るので、できるのも週1でしたが、家庭では毎日できるので1年もかからないでしょう。
当然、全保護者が偏食が矯正されて感謝していました。
ここで学べることは、
押し引きが必要だが譲歩ばかりもダメということ。
泣いたら許されるを学習します。
偏食対応でなく全般的な子ども(大人でも)へテクニックとして、大きな課題を始めに出して、それを緩和していく。
細かいテクニックとしては
- 見通しとごほうびの保障
- 一人分を決めておくこと
- 少な目に盛っておわかりを作り出すこと
- モグモグさせること
- 味をごまかさず、生で出していること
たくさん学びがあります。
ちなみにこれらをこの施設では「職員の経験」だけでやってました。
4-7.食事や回りの雰囲気、テレビは無し
友達との関係が親とのそれよりも重要になってくる学童期以降、友達を含めた周辺環境が意味を持ってきます。
友達の勧めで食べてみたらおいしかったなど、些細なきっかけをもらえる場合も。
家庭での食事でも、基本的に楽しい雰囲気にしましょう。
テレビは、、、消した方が良いでしょう。
ある程度年齢が上がってきても、ご飯の時くらいはテレビなしを習慣にしたらいいですね。
4-8.食育としての取り組み
食品への興味としては
- 料理をする
- 育てる
庭に毎日、日々大きくなっていくきゅうりに注目させ、遂に給食で出てきた。普段きゅうりが苦手な子も、
「あの庭に毎日育っていたきゅうりはどんな味かな?」など興味を持たせることもできます。
これらは幼児の頃に特に効果的です。
お手伝いの記事
私の経験した失敗。
焼き魚が苦手な子は魚の手づかみ取りをしたら興味を持って食べるんじゃないかと思ったけど、
魚の手づかみ取りをしただけでは興味はわかず、取って満足してしまい、焼いたのが出てきても食べたのは元々好きな子だけ。
取り組みの時間や、過程も考えないとダメですね。
小学生低学年くらいになってくると、それなりの食育の取り組みができます。
話や理屈も分かってくれば、話や「食べないとこうなる」などを示していくのも効果的ですよ。
5.無理をしない偏食対応〜無理な感覚は直せない、栄養は別で摂ればいい
偏食への対応を「できない・しないケース」もあります。
主に味覚や歯ごたえなど、苦手な感覚を払拭できない場合です。
その差は何か?
感覚は人それぞれです。
・ガラスで擦るような音が苦手
・首筋をなぞられるのがどうしても嫌
・納豆の臭いを嗅ぐと吐き気がしてくる
・蟻の集団みたいな細かく集まっているのを見るとゾワゾワしてしまう
他にも似たようなものありませか?
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚
偏食を直したいと思ったときに、「その食材への好みは矯正すべきものなのか?」が判断材料です。
食べるというのは
●「栄養をとるため」
●「楽しみで食べる」
全ての食べ物を食べさせる必要はあるのか?
ある程度の寛容さを持って当たりたいですね。
思いを持つのはいいけど、我が子といえど別の人間、思い通りにはならない。
できることを試してダメだったら精神衛生的に、「今はまだ無理なんだ」と引くこともアリ。
引くと言っても全くアクション無しじゃなく、「挑戦しつつも期待しすぎない」それが子育ての極意の一つです。
子どもの成長は急にできることが増える反面、行きつ戻りつが基本なので、焦らずにいきたいですね。
【人に期待しないアドラー心理学】人間関係で悩まない重要マインド
6.学童期までの子どもへの偏食対応まとめ
いかがでしょうか。
偏食についての原因と、それについての対応をお話してきました。
偏食を放っておいてなにも対処しないというのは、ある意味ネグレクト。
しかしキツキツな引き締めて教育を試みても、おかしな歪みが出てくるかもしれません。
いくつも具体例を出して対応方法を書いてきたので、その子に合ったどれかを実行すれば当たると思いますよ。
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